お墓を建てる際に、『どういうデザインにしようかな?』と迷われる方が多くいらっしゃいます。和型や洋型にオリジナル墓石などなど…。実は、昔々(鎌倉時代~室町時代)に一大ブームを巻き起こした『お墓の代表』と言われたデザインがあります。それが『五輪塔』というお墓です!
目次
- 五輪塔の歴史とは?
- 五輪塔の意味とは?
- 五輪塔に彫る文字とは?
- まとめ
2015年12月28日に公開した記事ですが、内容加筆、修正し2017年6月14日に改めて公開しています。
目次
・五輪塔の歴史とは?
一説に五輪塔の形はインドが発祥といわれ、遺骨を入れる容器として使われていたといわれていましたが、インドや中国、朝鮮に遺物が存在しないようです。日本では平安時代末期から供養塔、供養墓として多く見られるようになり、このため現在では経典の記述に基づき日本で考案されたとの考えが有力といわれています。五輪塔をお話する上で、欠かせない人物が、真言宗『中興の祖』と言われた、『覚鑁上人(かくばんじょうにん)』というお坊さんです。覚鑁上人は本山の高野山(和歌山県)で『高野聖(こうやひじり)』という念仏グループにいました。泉鏡花の小説で有名な『高野聖』です。その聖(ひじり)達が、高さ15cm程の、小さな木製の五輪塔を持ち、全国の人に『人が亡くなった時に、五輪塔にお骨や遺髪(いはつ)、写経を納めると、亡き人は必ず成仏し、極楽往生できる』と教えました。こうした聖たちの活動で、日本の仏教はお葬式やお墓と深く関わりをもつ事になり、五輪塔が普及しました。当時、皇族や貴族、武士や庶民に至るまで、日本中のお墓の8割以上を五輪塔が占め、約300年以上もの間『お墓』といえば五輪塔の事だったといわれています。ちなみに、一般的に和型と言われる、縦長の三段のお墓は、江戸時代の中頃から庶民に普及しはじめたものといわれてます。
・五輪塔の意味とは?
五輪と言えば『オリンピック』か、宮本武蔵の『五輪書』を思い浮かべると思いますが、五輪塔の五輪は『地・水・火・風・空』という宇宙を構成する五大要素を表していると言われています。さらに、五輪塔は死者を『成仏』させ、極楽浄土へ『往生』させるのが本来の意味と言われています。それ以前のお墓はただの『死者の埋葬地』でしたが、先に述べました覚鑁上人は往生と成仏の意味を実証して、初めて亡き人の魂を救い、死者を本当に大切にするお墓をつくりました。それはお墓の『一大革命』でした。また、五輪塔の形は『手に印を結び、口で陀羅尼(ダラニ)を唱え、座禅をして心で瞑想をする、『即身成仏』の3つの修行の姿を表し、同時に亡くなった人がみな成仏・往生した姿ともいわれています。
『即身成仏』の3つの修行の姿↓
・五輪塔に彫る文字とは?
五輪塔が出来た当時(平安末期)から鎌倉・室町時代まですべて図のように下から順に『ア・ヴァ・ラ・カ・キャ』という『梵字』(古代インドの文字=サンスクリット)を書きました。日本語で訳せば下から順に『地・水・火・風・空』と言います。しかし、江戸幕府の檀家制度によって、他宗のマネが禁止され、各宗派独自の文字を入れるようになりましたが、現在ではあまり気にする必要はないようです。
■天台宗(密教) ・・・『梵字』・『南無阿弥陀仏』
■真言宗(密教) ・・・『梵字』
■浄土宗・浄土真宗 ・・・『南無阿弥陀仏』
■禅宗(臨済宗・曹洞宗) ・・・『地・水・火・風・空』
■日蓮宗 ・・・『妙法蓮華経』
まとめ
『五輪塔』のお墓を建てると、亡くなった方は極楽浄土に行けるというとっても『ありがたい最高のお墓』とされています。また故人を仏様とし、極楽往生させる五輪塔は亡くなった人をもっとも大切にするお墓であり、日本仏教とお墓の歴史の上で、画期的な形だという事はいうまでもありません。亡くなった方を偲び、亡くなった方のあとの事を考え、願う文化はとても日本人らしい、やさしい文化であり、今後も大事にしていきたい文化ですね。さて、2015年のブログは今回が最後です。今年も、皆様には大変お世話になりました。今後もより一層、皆様のお役に立てる情報をご提供できるよう、スタッフ一同精進してまいります。来年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。